大人の単館映画の時代

昨日、今日と、試写会三昧。
今日の試写の開催者である配給・宣伝会社代表のKさんは、渋谷の単館映画ムーヴメントの仕掛け人的存在。
というと、ずいぶんバリバリのやり手マンを想像してしまうが、実際はいつも顔色が悪く、力が抜けきって、体全体から「疲れた〜」という無言のオーラを放出している。
彼と話をすると、こちらもつられて、力が抜けてしまう。
そして、縁側で日なたぼっこしながらお茶を呑んでいるじいさん二人、というような雰囲気になる。
というわけで、私はKさんの大ファンである。


今日は早く試写会場に入ったこともあって、久しぶりにじっくり話をさせてもらった。
興味深かったのは、先週拝見し感動した『いつか読書する日』について。
決して派手ではないこの作品を彼が配給・宣伝することにしたのは「ひとつの挑戦なのだ」という。
ずっと若者をターゲットにした映画をやって成功してきたが、彼ももう40歳。
40歳の自分が楽しめる「大人の単館映画」が、今はない。
結果、単館第一世代である30代〜40代の人たちが、渋谷から離れていった。
そしてその世代が、『世界の中心で、愛をさけぶ』や『いま、会いにゆきます』などの全国チェーン作品に流れてヒットしたのではないかと。
だから「大人の単館映画」は、マーケットとしては成立するはずであり、一度呼び戻せば、また30〜40代が渋谷のミニシアターに戻ってくるはず。
だから、『いつか読書する日』の配給に名乗りを上げ、ぜひとも興行的に成功させたいのだという。


まったくその通りだと思う。
最近の映画やドラマを観ていて感じる「幼稚さ」「うすぺらさ」にちょっと辟易しつつあったので、いたく感激する。
Kさん、力は抜けきっているけど、相変わらずスルドイところはスルドイ。
「大人が楽しめる味わい深い単館映画」の成功を、祈願します。
いつか読書する日』は、それに見合う作品だと思うし。