便所の人、相田みつを

相田みつをブームなのだろうか。
このあいだ本屋のレジ前で「相田みつを美術館」の割引チケットを見かけた。
かつてブームになったころは特になんとも思わなかったのだけど、そのとき、なぜか思わず、チケットに手がのびていた。
原因は、家人の実家のトイレにある。
そこには「相田みつを日めくりカレンダー」があり、なんとはなしに眺めていたのだが、そのうち、トイレを拝借するのが楽しみになっていた。
とても簡潔な、短い言葉だけに、いろいろ考えさせられるのだ。
それに、あの独り言のような語り口がいい。
トイレは外界から隔絶された、ひとりになれる場所。
思わず、自分と対話してしまう場所。
独り言が、こぼれてしまう場所。
失礼かもしれないけど、相田みつをはとてもトイレに合うな、と思っていた。

今日『相田みつを物語』というドラマを観ていたら、木梨憲武演じる相田みつをが、「便所こそがふさわしいんです」と言っていてびっくりした。にんげんだもの
便所こそがふさわしい……。
「トイレに合う」と思ったのは、失礼ではなく、ド真ん中の褒め言葉だったのだ。
ブルーハーツの「どぶねずみみたいに美しくなりたい」という詞と、似ている。
負けてこそ、にんげん?…………だもの。