物件マニア

歳の離れたいとこが大学入学で上京するとのことで、こちらの住宅情報誌を送ってあげる。


最初に上京したときの部屋探しは、イタイ目に遭うことが多い。
私の場合は、都心の物件を探そうと新宿の不動産屋に行ったのに、「その条件に合う物件はない」と何軒もお払い箱に。
ようやく相談に乗ってくれるところがあったと思ったら、車に乗せられ90分。
あれよあれよという間に奥多摩まで連れていかれて、高速道路が目の前に走るマンションの、1階の日当たり最悪の部屋を紹介された。
「ここはさすがにちょっと……」
というと、そのまま奥多摩で放り出され、泣く泣く自力で新宿まで戻った記憶がある。
新宿やら渋谷やらの不動産屋はたいていそんな感じだった。
不動産屋は、住みたい町の不動産屋を回った方がいいのだ。
──そんなこんなで、私はたくましくなった。こと、物件探しに関しては。
間取り図を見るのも好きだし、もはや物件マニア。
そんな趣味も兼ねて、今日もマンションのモデルルーム見学へ。
近所の築浅中古物件。
1階でちょっと日当たりは悪いけど、けっこう広い専用庭があって、楽しげ。
夏にはビニールの丸いプールを置いて1.3ヶ月児を水浴びさせたり、ちょっとした家庭菜園で自給自足もできそう。老後に盆栽を育てるのにも適……。
想像は膨らむばかり。


そしてこのマンションの前を通るたびに、マニアは思うのだ。
ふふふ、このマンションの間取り知っているもんね。
と。
そう思いながら散歩するのが、最近のマイブーム。
……なんか、ヒマな人みたい……。