世界にひとつだけの「  」

山、川、海、太陽、月、空気、人間・・・。

文字を見ると、それぞれのものが頭に浮かぶ。
でも、山は山でなく、川は川でなく、人間は人間ではない。

たとえば言葉のない原始時代には、「山」という言葉は無かったはずで、でもそれじゃあ何かと不便だというので、山の絵を描いて説明するようになって、それがだんだん象形文字になって、「山」という字になっている。便宜上、名前がつけられただけで、もともと、山は山ではないのだ。
名無しが、本当の名前。

子供の名付けの本をたくさん買った。
そこには膨大な量の名前が載っていて、これだけ載っていれば気に入る名前のひとつもあるだろうと思っていたのだが、実際はほとんどピンと来なかった。
産まれた子供の顔を見たらピンとくるかもしれない、と思ったが、実際はそんなこともなかった。
名無しが、一番しっくりくる。

名前をつけることばかり考えていたが、名前をつけない、名無しという選択肢はないものだろうか。
変わった名前の人はたくさん知ってるが、名前が無い人は見たことがない。
名無しこそ、「世界にひとつだけの名前」かもしれない。

そういえば、女優に「ミムラ」さんという人がいる。
推測するに彼女はおそらく「三村○○」さんじゃないかと思うのだが、「三村  」と名無しだったら・・・先を越されたようで悔しい。